理系大学生の本棚

理系大学生のPが本の紹介、感想等々を書いていきます。

マイ国家

国家」の要素って何だと思いますか?

突然の切り出しですが「国家」という言葉を大辞泉で調べると以下のようになります。

一定の領土とそこに居住する人々からなり、統治組織をもつ政治的共同体。または、その組織・制度。主権・領土・人民がその3要素とされる。

つまりは「主権、領土、人民」この3要素で国家は構成されるのです。

今回ご紹介する星新一さんの

マイ国家

マイ国家 (新潮文庫)

マイ国家 (新潮文庫)

 

の短編「マイ国家」では領土は自宅、人民は自分ひとりで主権を持つ国家として独立宣言をした男が登場します。

ここではそんな「マイ国家」に訪れた銀行の営業マンが不法侵入、スパイ容疑でとらえられてしまうところから始まります。

はじめに外部連絡を3分許すといわれ、「マイ国家」の男が外務省に電話をつなぎますが「マイ国」なんて信じてもらえるわけがなく、主人公は外部連絡を絶たれてしまいました。

その後主人公と酒を飲みかわしながら政府の枠組み批判をする「マイ国家」の男

主人公の狙いは話の中で矛盾を指摘することでした。

しかし批判を聞いて主人公は

ようすは少しづつわかってきた。筋の通ったところもあるようだ。これは、この男のなんなのだろう。主義なのか、哲学なのか、人生観なのか、趣味なのか、それとも若者の趣味にかぶれたせいなのか、アル中の妄想なのか、狂気の産物なのか、見当もつかぬ。もっともどれにしても大差ない。

筋が通ったところもあるようだ」と認めてしまいます。

その後、恩赦を受け解放されるはずでしたが国の運営について、つまりどうやって生計をたてているのか聞いてしまい「マイ国家」の男に再び処刑されることになってしまいます。

一体、主人公はどうなってしまうのか?

男が「マイ国家」を立ち上げたのはなぜなのか?

このあたりがショートショートの核心になってきます。

ほかにも宇宙人のある”儀式”について書かれた「儀式」、ある星のロボットの”宿命”についてかかれた「宿命」など、全31編が収録されています。

どの短編も面白いもので星新一さんの魅力が詰まっていますが、上で紹介した二編のショートショート儀式」と「宿命」は特におすすめです。

ぜひ、読まれてはいかがでしょうか?